「猫じゃらし」設立の経緯と思い

猫じゃらしは、個人個人のボランティアが協力しながら、野良猫のTNR(Trap:捕獲器で捕まえる・Neuter:不妊去勢手術する・Return:元の場所に戻す)をしたり、保護猫譲渡会を開いたり、保護猫を預かったりするグループです。

グループ名をつけたのは2017年4月からです。譲渡会を開くのに、会として名前があった方が良いんじゃない?ぐらいの軽い気持ちでの結成でした。それ以前には、倉吉市や鳥取県中部在住の大先輩たちが、動物愛護活動を20年ぐらい続けて来ておられたそうです。

名前がつくと多くの方に親しまれるようになり、それまでの先輩たちよりも少し若い会員が集まるようになりました。それぞれの立場で猫を保護して、なんとか命をつなげて新しい里親さんの元へ猫を送り出す、という活動をしていたのを“点”の活動とするならば、協力し合うことにより、点と点は“線”で結ばれて…… 今では大きな円を描くようになり、充実した活動ができるようになりました。

世界から見ればまだまだ動物福祉の後進国と言われている日本の現状に目を向け、日本の中でも猫の問題にいち早く着手した都市部の活動を手本にしながら、手探りで“猫じゃらし”らしい活動をしたい。そんな思いで、みんなで知恵を出し合い協力しあって、日々の活動に取り組んでおります。

私は小さい頃から動物をよく飼う環境で育ちました。しかし、両親の昔ながらの動物の扱いや考え方の中で、終生飼養できたことが無かったのです。保育園や学校から帰ると犬や猫を遺棄されて居なくなっていて、とても悲しくて泣いた事が何度もありました。新しい子犬が来た時、この子が父にどうか捨てられませんように!と夕方日が落ちて暗くなっても、子犬から離れられなかった自分をよく覚えています。

そんな悲しい気持ちになるような飼い方は絶対にしないと、7歳の時の私は心に誓ったのです。

それから何十年も時は流れて、2011年、ゴミ置き場に捨てられていた猫が居るのだけど、猫を飼いませんか?とママ友さんから連絡をいただき、大人になってからは初めて猫を飼うことになったのです。猫の飼育は、30年のブランクがありました。

30年前は、カツオ節ご飯をあげて、ミルクも牛乳でした。トイレは海辺に行って砂を取ってきておりました。その頃は去勢手術もせず、外に出して飼っていました。その猫は、家の前で交通事故に遭いなくなってしまいました。悲しくて悲しくて、もう二度と猫は飼わない!犬のように繋いでおくことはできないんだからと、その時、思っていました。

30年経ってみると、時代は変わっておりました。

猫は完全室内飼いの時代となって、キャットフードや猫砂や猫トイレも進化して、不妊去勢手術することにより健康管理にもつながるなど、猫の生態がだんだんと解明されておりました。

猫を交通事故に遭わすことなく、安全に、大切にしてあげたい。最期の最期まで、幸せに過ごさせたあげたい。その思いで、大人になってから最初の猫を飼い始めたのです。

そうしたある日、外を歩いている野良猫が目に入りました。この子はどうやって、寒い冬の日をすごしているのだろうかと心配になりました。そして、野良猫についてパソコンで検索してみると、“地域猫活動”によって不幸な野良猫を減らしていくという考え方に出会ったのです!

そうだ!これだ!今まで、私の人生の中で、幼少期だったとは言え、私の親に捨てられてしまい悲しい思いをした犬や猫が沢山いる。その償いとしてこの活動をしよう!と思ったのです。

私の住んでいる町には、2016年までは野良猫がたくさんいました。私が目にした野良猫は23匹でした。おそらくもっといたのだろうと思います。子猫の惨殺事件もその頃起きました。TNR活動の手始めに、町の厚生部長に立候補して、町の平和のためにこの身を捧げようと思ったものです。

それまで、我が家で餌付けした野良猫を8匹ぐらい自費で手術しておりました。町のどこに猫が集まっているのかを調べて、餌やりさんの元にたどりつき、猫の話で盛り上がり、一緒に協力して15匹の猫を手術できました。その後も、新顔猫ちゃんや流入猫がありました。全て不妊去勢手術をして、慣れている猫はTNTA(Trap・Neuter・Tame:人慣れさせる・Adopt:里親に譲渡)しております。今では、野良猫の姿をほとんど見かけません。私の住む町は平和になりました。

餌やりさんも実は、野良猫に餌をあげて、野良猫の安否をいつも気にしていなければならないという生活に疲れておられました。自分がいなくなったらこの野良猫たちはどうやって生きていくのだろう?といつも不安な気持ちなのです。

野良猫のTNRを実施した結果、餌やりさんは、猫の頭数が減って気持ちが楽になられました。また、ご近所も野良猫の被害が少なくなり、安心して過ごせるようになったのです。

昨今では、多頭飼育崩壊の現場へ、猫の救出・ゴミ屋敷の清掃のお手伝い・不妊去勢手術の搬送などのお手伝いをする事が増えて来ました。

たくさんの不幸そうな(猫風邪で目ヤニが出てクシャミや鼻水で鼻呼吸が困難だったり、体が汚れて毛艶が悪い)猫に出逢います。まだまだ猫の繁殖力の旺盛さをご存知ない餌やりさんも多いのです。また、餌やりさんが生活困窮者であったりすると、不妊去勢手術の費用を捻出する事が不可能です。

悪循環の積み重ねで、野良猫たちは過酷な環境で生き延びているのです。言い換えれば、すべて人間が関わって、不幸な猫を増やしているのです。だから、私たち猫じゃらしは、人間が引き起こした問題を、人間の手で解決したいと思っているのです。

この考え方は、幼い頃に捨てられてしまった私の犬や猫への贖罪の気持ちに通じるものがあります。

もちろん、個人個人の会員の集まりですので、それぞれの猫への思いはそれぞれなのだろうと思っています。その中で、動物福祉や動物愛護の観点で目指すものが同じ会員の手と手を結んで、これからも、猫のため、世のため、人のためと、体が動く限り、思い切り尽くしていく所存です。

猫じゃらしの応援をよろしくお願いします。

猫じゃらし副代表(前代表) 丸本